新耐震基準とはどんな基準?

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現在の耐震基準(いわゆる新耐震基準)は建築基準法において1981年6月1日に導入されました。

1978年の宮城県沖地震を踏まえた改正されたといわれていますが、大学で新耐震基準をはじめて学んだのが私達の世代になります。

それから40年以上たち、いくつかの大きい地震を経て新耐震基準の有効性や問題点がわかってきましたので、ポイントを整理して解説します。

新耐震基準とは

新耐震基準の目的は「 中規模の地震ではほとんど被害はなく、大規模の地震では建築物が壊れても倒壊せず、中の人の命を守ること」です。

新耐震基準とそれ以前の旧耐震基準とを比較すると分かりやすいので、表1をご覧ください。

地震の規模に対する考え方が新耐震基準ではより厳しくなっているのがわかります。

建築基準法における新旧耐震基準を、震度5強程度の中規模地震と震度6〜7の大規模地震でどのように異なるか比較した表
<表1>

少し難しいですが新耐震基準についてもう少し理解していただくため、図1の国交省HPに掲載されている耐震基準の概要をご覧ください。

耐震基準の計算方法は許容応力度計算(一次設計)と保有水平耐力計算その他(二次設計)の二つあります。

一次設計では「ほとんど損傷しない(弾性域)」、二次設計では「倒壊・崩壊しない(塑性域)」ということになります。

国土交通省のホームページに掲載されている「建築基準法の耐震基準の概要」で、応力度と変形の関係で説明している図
<図1>

もう少し分かりやすくするため建物をバネに見立ててみます。

図2のようにバネに重りを吊るすとバネは伸びますが、重りを外せばまた元の長さに戻るのが「弾性変形」です。

一方、バネの弾性範囲を超えた重りを吊るすとバネは伸び切ってしまい元の長さに戻りません。これが「塑性変形」です。

バネに吊るした重りの重さによって、重りを外しても元どおりになる(弾性変形)か伸び切ってしまう(塑性変形)かを比較した図
<図2>
整理すると数十年に一度発生する震度5強程度の中規模地震の地震力に対しては建物はほとんど損傷しません(=弾性変形で元に戻る)。一方、数百年に一度発生する震度6強から7の大規模地震の地震力に対しては倒壊はしないが建物は損傷している可能性があります(=塑性変形で元には戻らない)。
<ご参考>
震度6強や7の地震に遭った場合は、見かけは何ともなくてもどこかに損傷がある可能性があるため、必ず施工業者に確認してもらって下さい。

図3は震度7を2回記録した熊本地震において、「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」で報告されている木造建築物の建築時期別の被害状況です。

あきらかに旧耐震基準の建物より新耐震基準の建物の方が被害が少なく、新耐震基準の有効性が証明されています。

2016年の熊本地震で木造建物の被害状況を、旧耐震基準、新耐震基準、2000年6月以降で比較した図
<図3>

新耐震基準が1981年6月以降と2000年6月以降に区分されているのは、2000年6月以降は建築基準法施行令が改正され継手等の仕様が強化されたためですが、これによって2000年6月以降の建物は更に強くなっています。

ただ一方で新耐震基準の建物であっても倒壊・崩壊した建物があることも事実です。

新耐震基準の位置づけ

新耐震基準では「建物を使う人の安全を確保すること」が目的とされていますが、数十年に1度程度発生する地震動(中規模の地震)に対してほとんど損傷せず、数百年に1度程度発生する地震動(大規模の地震)に対して倒壊・崩壊することがないようにしている理由は経済合理性によるものです。

木造建物の法定耐用年数は22年ですが、実際はもっと長く使用されています。

中には50年やそれ以上というケースもありますが、新耐震基準では「数十年に一度発生する地震」つまり木造建物が使える間に一度は経験するであろう中規模の地震では、建物が壊れることが無いようにしています。

一方「数百年に一度発生する地震」つまり木造建物が使える間に一度来るか来ないかわからないような大規模な地震のために、全く壊れない建物を設計し建築することは経済合理性がないということです。

そのため震度7の大規模地震に相当する熊本地震において一部の建物が大破したり倒壊・崩壊しましたが、これは法律の趣旨からして問題ではなく、新耐震基準の効果があったということの証明になっています。

法律では経済合理性という理由で建物が絶対損傷しないことを基準とはしていませんが、経済的に復旧を支援する制度が十分ではないのが実態で、大破や倒壊・崩壊した建物の復旧の負担は当然のごとく所有者に委ねられてしまいます。

そもそも新耐震基準が定められている建築基準法は、図4の国交省の「建築関係法の概要」にあるとおり建築物の最低基準を定めたものです。

ただし最低基準とは言っても法律に基づいて設計することは簡単なことではないのですが、より高い品質の住宅を望むのなら住宅品質確保法(通称「品確法」)等の住宅関連法に基づく必要があります。

国土交通省による建築法体系の概要で、関係する建築基準法や建築士法、住宅関連の各種法律の位置付けを比較した図
<図4>

つまり地震から命だけでなく財産である建物を守りたければ、最低基準である建築基準法の新耐震基準に沿ったものだけでは十分ではないということです。

特に地盤の状態で地震力は大きく変わり、建物の損傷に大きな影響を与えるため注意が必要です。

まとめ

大きな災害では「命が助かっただけで十分」と誰しも思うことですが、個人が生活の基盤である住宅を失った場合、元の生活に戻るためには大変な苦労を強いられます。

特に地震の場合は損害保険や共済での補償が限られているため負担が他の災害より大きくなりますので、以下のことについては十分留意しておいて下さい。
(ただし保有資産が十分あり、地震で建物を失っても問題ない場合はこの限りでありませんが・・・)

  • 新耐震基準だからといって安心しない。
  • 建物を建築するなら新耐震基準より高い耐震性能を目指す。
  • 旧耐震基準の建物は耐震診断を行い新耐震基準を満たしていないなら耐震補強を行う。
  • 新耐震基準でも高い耐震性能を持たせるため耐震補強を行う。
  • 新耐震基準や旧耐震基準の建物は損害保険や共済で地震に備える。
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