みなさんは災害に遭っても大丈夫でしょうか。
ここ日本では幾度となく地震や台風や大雨など様々な自然の脅威にさらされていますが、みなさんは災害に見舞われてもほんとうに大丈夫ですか、何の心配もありませんか。
みなさんは胸を張って「大丈夫、心配ない」と応えられますか。
災害耐性
住んでいる場所やこれから住む所がどんな災害に見舞われるのか、住んでいる建物はどんな災害に弱いのかがわかれば何らかの対策をとることはできます。
そこで災害耐性という考え方をもとに、みなさんの災害に対する強さや弱さを「安全性」と「回復力」の二つの方向から診断し、災害対策に役立てていただけるものと考えています。
災害耐性については、こちらで解説していますので、ご参照ください。
安全性とは
例えば地震の場合、建物が建築基準法の耐震基準いわゆる新耐震基準に基づいて建築されていれば安全だと思われています。
世界的にも厳しい基準である新耐震基準では震度6強から震度7の大規模な地震でも建物が倒壊しないことしないことを目的にしているため、地震に遭っても大丈夫と思われています。
しかしここでの答えは「NO」です。(参照:新耐震基準とその位置付け)
耐震における一番のポイントはたとえ建物が丈夫であっても、その地盤が揺れやすければ建物に大きな力が加わるため、地震に対する建物の強さは建物の強度と地盤の揺れやすさをセットで考えなければいけないことにあります。
つまり同じ強度の建物であっても地盤の揺れやすさが違うと、地震から受ける力が異なりその力が建物の耐力を上回れば建物は耐えきれず、最悪の場合は倒壊する可能性もあります。
よく話題になる活断層は日本全国に約2000あると言われていますが、見つかっていない活断層も多数あります。そして活断層での地震の周期は数千年から数万年と言われており、正確に予測することは困難です。
つまり私達にできる事はできる限り揺れない場所に住むか、揺れても壊れない建物に住むしかないと言えます。
そのためにも建物の強度と地盤の揺れやすさをセットで考えることが大切なのです。
しかし残念ながらそのような設計を行うのは一定規模の建物だけで、一般の戸建住宅では例え地盤調査を行っていても地盤の揺れに見合った強度の建物が造られることはほとんどありません。
この例では安全性には「地盤の揺れやすさ」と「建物の強度」の二つの側面でみる必要があるとしていますが、これをリスクマネジメントと災害耐性との関係にあてはめると以下のようになります。
地盤の揺れやすさ ⇨ リスク回避
建物の強度 ⇨ リスク予防
このように安全性は「リスク回避」と「リスク予防」の二つの側面から判断します。
ただし安全性をトコトン追求できるなら、全く揺れない場所か新耐震基準を遥かに超える頑丈な建物にすれば良いのですが、残念ながらこれは誰しもが出来ることではありません。
単純に安全性を経済性と天秤にかけてみると、揺れない場所や非常に頑丈な建物が安全だとは分かっていても現実問題として実現にはそれ相応のコストが必要なのは疑いようもなく、青天井でコストを掛けることができないなら、安全性をどこかで妥協することになります。
そこで安全性だけでは担保できない部分、つまりある程度は被害が出ることを想定して、その被害を受け入れられるように備えることで災害に対する強さを持つ必要があります。
これが災害耐性における重要な要素である「回復力」です。
回復力とは
回復力は「リスク移転」と「リスク保有」の二つの要素から判断します。
リスク移転とは保険や共済を利用して災害で被った被害の一部や全部を他者に移し、直接被る被害額を軽減させることです。
一方、リスク保有とは他者に移転することが出来なかった被害を受け入れることであり、金銭的には再建するために資産を処分したり融資を受けて返済することになります。
一般の自然災害では損害保険や共済で建物や家財の被害をほぼ100%カバーすることができますが、地震の場合には基本的には50%しかカバーできずリスク移転だけでは対処できません。
したがって不足する部分は自身で対処する必要があるのですが、多くの方がローンを組んで住宅を購入しているため、自己資金が十分でなければ再びローンを組むことになり結果二重ローンで生活の再建が厳しくなるという状況に落ち入ります。
ここまでは回復力の基本ですが、実は回復力には悩ましいところがあります。
例えば、生活の基盤となる収入を得るための勤務先が地震で大きな影響を受けた場合、安定した収入が脅かされ生活の再建が厳しくなることも考えられます。
つまり勤務先が災害に強いか弱いかも個人の回復力に影響してしまいます。
またさらに大きな問題として、大きな災害であればあるほど社会や経済に大きな影響を長期間に渡っておよぼす可能性が高くなり、景気や物価、金利、為替などの変動で生活の再建に大きな影響を与えることになります。
つまり被災後の生活を再建するために必要な回復力は、想定する災害によって変動しなおかつ自分自身では対処できないような不確実な要素も加わり正確に判断することが難しくなってしまいます。
そして誰しも住まいが全壊することなど想像したくもないため、被災後の生活の再建など考えたくありませんから、真正面から向き合える方は非常に少ないのが現実です。
それもあってか「生きていればなんとかなる」という発想に陥りがちです。
しかし個人の生活継続(LC:Life Continuity )を考える立場からすると「なんとかなる人」もいらっしゃいますが、一方で「なんともならない人」もいらっしゃるのが現実です。
このように回復力を考えることは、触りたくない腫れもののようなところがありますが、あえてそこに向き合っていただくことで、災害に強くなっていただけると考えています。
災害耐性診断
このように災害耐性は「安全性」と「回復力」の二面で判断しますが、安全性はリスク回避とリスク予防、回復力はリスク移転とリスク保有とで判断します。
したがって災害耐性を診断するためには、「リスク回避」「リスク予防」「リスク移転」「リスク保有」に関する項目について調べますが、項目が多岐に渡りかつ相互に関連するため各項目の確認だけでなく関連する調査や現地調査、さらには関係者へのヒアリングなどが必要になります。
そのため診断には時間も手間もかかることから、通常はコンサルティングの一環として災害耐性の診断を行います。
〈注意〉 現地調査では建物の耐震性を調べるケースがありますが、各地の行政で行なっている補助金等の対象になる耐震診断ではありませんので、ご注意ください。
しかしこれでは手軽に災害耐性を把握することは難しくなってしまうため、現地調査や一部の調査を省いて災害耐性を把握できるように診断方法を見直しました。
ただし診断は個人のみを対象とし、災害は回復力が厳しくなる地震災害(地震動、地震火災、液状化、津波、土砂崩れ)のみを対象とします。
現地調査などを行わないため診断の精度は若干劣りますが、ある程度の傾向を把握することはできますので、予備調査的な位置づけでもご利用いただけるものと考えています。
総合診断と個別診断
診断は総合診断と個別診断の二つご用意しています。
総合診断では地震の際の主な災害である地震動・地震火災・液状化・津波・土砂崩れなどの地震災害を対象にして安全性と回復力から災害耐性を診断します。
一方、個別診断では安全性のみの診断と回復力のみの診断にわかれ、安全性については地震災害の基本である地震動と地震火災に限定しますが、個別診断で安全性と回復力の両方の診断を行う場合には災害耐性の診断を行います。
また個別診断の安全性の診断では液状化・津波・土砂崩れをオプションで追加していただけるようにしています。
診断結果
災害耐性の診断結果は安全性と回復力の二軸の図で表します。
また診断の根拠になる資料やデータを明記して災害耐性と安全性・回復力のそれぞれについて地震の災害別に解説を行いますので、診断結果をベースに地震災害に関する様々な事柄に触れていただけるものと考えています。
診断のフロー
基本的な診断のフローは以下のとおりです。
原則、メールによるチェックシートなどの送受信で診断しますが、必要に応じてメールや電話・チャットなどで確認させていただきます。
- 災害に対する安全性や回復力に関する基本的な設問(チェックシート)に回答
※安全性のみの個別診断では以下の2.3は行いません - チェックシートの回答内容を踏まえ、住宅が全壊した場合を想定して生活再建を具体的にイメージするためのシミュレーションを実施
- シミュレーションに基づき生活再建の難易度を自己評価し、チェックシートに追加して回答
- チェックシートに基づき災害耐性を診断
※災害耐性診断のお問い合わせはこちらへ