土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域とは
土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域とは、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(通称「土砂災害防止法」)によってがけ崩れや土石流、地すべりなどの土砂災害が発生するおそれのある地域として指定されたもので、一般的に土砂災害警戒区域はイエローゾーン、土砂災害特別警戒区域はレッドゾーンと呼ばれている。
土砂災害防止法
土砂災害防止法は人家に影響を及ぼすおそれのある土砂災害の発生する可能性のある区域を、土砂災害防止施設の有無にかかわらず明らかにすることを目的としている。
<参考:土砂災害防止法の概要(国交省HPより)>
土砂災害対策に関する法律としてはこの法律以外に「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)」「砂防法」「地すべり等防止法」などが土砂災害防止施設を設置することを目的とした法律がある。
指定基準
土砂災害については「土石流」「急傾斜地の崩壊」「地滑り」それぞれについて指定基準を定め、警戒区域や特別警戒区域として都道府県知事が指定する。
<参照:下図(国交省HPに掲載されている土砂災害警戒区域の概要)>

土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
土砂災害による被害を防止・軽減するため、危険の周知、警戒避難体制の整備を行う区域として法施行令第2条に以下のとおり規定されている。
急傾斜地の崩壊
- 傾斜度が30度以上で高さが5m以上の区域
- 急傾斜地の上端から水平距離が10m以内の区域
- 急傾斜地の下端から急傾斜地高さの2倍(50mを超える場合は50m)以内の区域
土石流
- 土石流の発生のおそれのある渓流において、扇頂部から下流で勾配が2度以上の区域
地滑り
- 地滑り区域(地滑りしている区域または地滑りするおそれのある区域)
- 地滑り区域下端から、地滑り地塊の長さに相当する距離(250mを超える場合は250m)の範囲内の区域
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
避難に配慮を要する方々が利用する要配慮者利用施設等が新たに土砂災害の危険性の高い区域に立地することを未然に防止するため、開発段階から規制していく必要性が特に高いものに対象を限定し、特定の開発行為を許可制とするなどの制限や建築物の構造規制等を行う区域として、法施行令第2条に以下のとおり規定されている。
急傾斜地の崩壊
- 急傾斜の崩壊に伴う土石等の移動・堆積により建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石等の移動に対して住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく耐えることのできる力を上回る区域。
土石流
- 土石流により建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石流に対して住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく耐えることのできる力を上回る区域。
地滑り
- 地滑り地塊の滑りに伴って生じた土石等により力が建築物に作用した時から30分間が経過した時において建築物に作用する力の大きさが、通常の建築物が土石等の移動に対して住民の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれのある崩壊を生ずることなく耐えることのできる力を上回る区域。
- 地滑りについては、、地滑り区域の下端から最大で60m範囲内の区域。
指定状況
土砂災害警戒区域の指定状況については国交省HPに以下の内容で掲載されている。
- 都道府県別指定状況(土石流、急傾斜地の崩壊、地滑り等)
- 都道府県別指定状況グラフ
- 指定状況推移
2021年12月31日時点の全国の指定状況は以下のとおりだが、指定区域は調査が年々進むにしたがって増加しているため、最新の指定状況を把握することが大切。ちなみに都道府県別では広島県が突出しているが、土砂災害危険区域は人が住むところを対象にしているため、現時点で未指定のところであっても開発が進みあらたに指定されるケースもありうる。
<注:土砂災害警戒区域数にはうち数として土砂災害特別警戒区域数が含まれる>
2021/12/31時点 | 土石流 | 急傾斜地の崩壊 | 地滑り | 合 計 |
基礎調査を実施し 公表済みの区域 | 218,304 | 448,199 | 15,861 | 680,364 |
土砂災害警戒区域 | 214,000 | 442,728 | 15,691 | 672,419 |
土砂災害特別警戒区域 | 154,677 | 416,093 | 1 | 570,771 |
指定された場合
土砂災害警戒区域や土砂災害特別警戒区域に指定された場合、土砂災害防止法に基づき、それぞれ以下の事柄が義務付けられており実施される。
土砂災害警戒区域
- 警戒避難体制の整備【市町村等】
- ハザードマップの配布【市町村等】
- 要配慮者利用施設における避難確保計画の作成等【施設管理者】
土砂災害特別警戒区域
- 特定開発行為に対する制限【都道府県】
- 建築物の構造規制【都道府県または市町村】
- 建築物の移転等の勧告【都道府県】