正常性バイアス(正常化の偏見:Normalcy bias)とは
認知バイアスの一種で社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性。
<バイアス(bias)とは> 「偏り」という意味だが、心理学において「人の思考における偏り」を指し、「思い込み」や「先入観」、「偏見」「差別」といったものも含まれる。
特徴
自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、逃げ遅れの原因となる。
- 都合の悪い情報を無視する
- 自分は大丈夫、今回は大丈夫、まだ大丈夫などと過小評価する
<例> 大雨で川が増水して避難警報が出されても「自分は大丈夫」「家まで水は来ない」と思い込んでしまい、結果として避難が遅れたりするような事態を招く。
メカニズム
いま私たちは危険の少ない安全な社会で生活している。
安全だからこそ危険を感じすぎると日常生活に支障を来たしてしまうため、危険を感知する能力を低下させようとする機能が自動的に働いてしまう。
また危険と同じように予想しない出来事や変化、あるいはまったく新しい出来事に対して敏感に反応してしまうと心が疲弊してしまうため、それを防ぐため人間の心は鈍感にできている。
そのため危険や予期しない出来事や変化などを「大丈夫」「問題ない」「正常な範囲の出来事」と心が勝手に認知してしまう。
津波が押し寄せているのに逃げずに見ている人々、大雨で川が増水して堤防が決壊しそうなのに逃げずに見ている人々、いずれも本当に危険な状態でも「正常性バイアス」が働き「危険と思えない」ため避難が遅れるという現象がおこる。
<参考:災害時の心理学を研究する広瀬弘忠氏(東京女子大学名誉教授)によると> 日本でも欧米でも、災害の被害を避けるために避難の指示や命令が発令されても、避難する人の割合は50%を超えることはほとんどないという調査結果がある。
<参考:人間の感覚> 人間の感覚も物理的な刺激に対して鈍感にできており、音の強さが2倍になっても感覚としては2倍ではなく少し強くなった程度にしか感じない。
正常性バイアスと同調性バイアス
「同調性バイアス」とは集団の中にいると他人と同じ行動をとってしまう人間の心理で、みんなに合わせ行動し自分だけ違った行動を取らないようにすること。
例えば「飲食店でみんなちゃんと並んでいるから自分も並ぼう」というように、日常生活であれば協調性につながる心理となる。
しかしこの「正常性バイアス」と「同調性バイアス」が災害時には非常に危険な状態をつくりだす。
- 災害の危険を知らされる
- 「正常性バイアス」が働き危険を危険と感じられない
- 「正常性バイアス」に陥っている人が周りに沢山いることで「同調性バイアス」も働く
- 多くの人が逃げ遅れる
対策
「正常性バイアス」は人間の心が持つ自然な防御反応であるため、自分自身でその事に気づくことはなく「正常性バイアス」が働いているかどうかもわからないので簡単に防ぐことはできない。
また日常生活において常に「正常化バイアス」に堕ちいないことを意識することは不可能であるため、防災においては以下の手段が有効と考えられている。
- 避難訓練
- 率先避難
避難訓練
疑似的な緊急事態としての「避難訓練」を経験させることで、万が一の想定外の事態を想定内の事態として正常性バイアスに陥ることを防ぐたことができると考えられている。
<参考> 日常的に危険な現場を経験している消防士などは、正常化バイアスに陥ることなく危険を察知すると素早く行動することが出来るが、そうでない一般の人々は避難訓練による疑似体験を想定内とするためにも定期的に訓練を行うことが不可欠。
率先避難
正常性バイアスでは、自分の都合のいいように何事も解釈して適切な判断が出来ないといことを前提にして、必ず「何かあったらとにかく避難する」「周りが避難していなくても率先して避難する」と行動を決める。